古賀侗庵『今斉諧』巻之五「狐(補遺)」より

厠の惨劇

 佐賀の侍某の家は、山林が迫る辺鄙なところにあった。
 庭に畑を作っていたが、そこの穴で狐が子を産んで、たいそう耕作の邪魔になった。
 下僕がこのことを主人に話すのを、その場にいた住み込みの婆が聞いて言った。
「簡単に片を付けてあげますよ」
 もともと平気で残酷なことをする婆で、大釜に湯を沸かし、ぐらぐら煮立ったのを器に入れて畑に持ってゆき、狐の穴に注ぎ込んだ。
 狐の子はすべて、熱湯に爛れて死んだ。老狐が一匹、からくも逃れ出た。

 後日のある夕方、婆が便所へ行ってしゃがんだとき、狐が真下から竹で肛門を突き刺した。
 婆はその傷がもとで、ついに死んだ。
あやしい古典文学 No.1079