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古賀侗庵『今斉諧』巻之一「鬼責不返金」より |
金返せ |
奥州耶麻郡戸沢村の弥七という者は、かつて友人某に金を借りた。 某は、弥七が金を返さないうちに死んでしまって、近くの正福寺に葬られた。 ある日の夕刻、弥七は正福寺に立ち寄り、寺を出た時はもう夜だった。春の月が朦朧として、行く道も定かに見えない。 そのとき、一人の影のごとき者がひらりと傍らに来て、弥七の右肘を掴み、へし折った。 「一瞬の出来事だったのでよく見なかったが、あれは某の幽霊にちがいない」と、弥七は会う人ごとに語った。 以後、折れ歪んだ肱を恥じて、いつも袖で隠し、人に見せなかった。 |
あやしい古典文学 No.1087 |
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