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古賀侗庵『今斉諧』補遺「天雨毛」より |
獣毛 |
八月十四日の朝、江戸市中に激しい雨が降り注いだ。 雨が上がって後、辰ノ口・桜田・赤坂・御茶ノ水などの地では、大量の毛が降った。 ある人がその毛を持ってきて筆者に見せてくれたが、長さは長短さまざま、中には一尺ほどのものもあった。色は純白、あるいは灰色で、いくぶん馬の鬣に似ていた。ただし、馬の鬣ほどの太さはないし、強靭さもなかった。 結局、どんな獣の毛なのか、だれにも分からなかった。 噂ではその日、商人の下男が赤坂門外で、炎のごとき巨獣が空へ昇り、はるかに翔け去るのを見たという。 もしかすると、その獣が遺したものかもしれない。 |
あやしい古典文学 No.1091 |
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