古賀侗庵『今斉諧』巻之二「隆冬生筍」より

冬の筍

 ある侍長屋の裏に竹林があって、どういうわけか真冬に無数の筍が生え出た。
 皆たいそう喜んで、煮て食ってかまわないものかどうかを物知りの老人に尋ねたところ、老人は言った。
「食わないほうがよい。その下を掘ってみれば、きっと何かの異物があるだろう」
 そこで、下僕に命じて掘らせたところ、一尺あまりの地下に蛇が蟠り、絡み合っていた。その数は幾千万とも知れなかった。
 大いに恐れて、急ぎまた埋め戻し、もちろん筍は食わなかった。
あやしい古典文学 No.1119