古賀侗庵『今斉諧』巻之三「蛇啼」より

木の中で鳴くもの

 羽州米沢の山中の大木が、ある日、これといったわけもなく、みずから出火した。
 木が燃え上がるとともに、幹の中から叫ぶような鳴き声が聞こえた。その声は延々と続いて、容易に止まなかった。
 火がおさまってから調べてみると、焼け焦げた木の幹に臼のような窪みがあって、その中で巨大な蛇が焼死していた。
あやしい古典文学 No.1131