下津寿泉『怪妖故事談』巻之五「ヘノコノ中虫出ル事」より

陰茎から虫

 中国の医書『石山医案』によれば、ある人が、下腹がひどく痛む病気になり、さまざまな薬も何一つ効かなかった。
 こうなったらなんでもやってみようということで、医者が、へそ下三寸に十数か所の灸をすえたところ、次の日、陰茎の中が痒くなった。
 見ると、陰茎の先から、虫のようなものが少し出ている。急いで毛抜きを用いて抜き出した。長さ五六寸の虫だった。
 それから毎日出て、合計七匹。最初に虫を見たときは驚いたが、後には平気になって、手で直接引っ張り出した。

 下腹の痛みは癒えた。あてずっぽうの治療が功を奏したのである。
あやしい古典文学 No.1143