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古賀侗庵『今斉諧』巻之一「奇鳥」より |
火の鳥 |
文化三年三月の江戸の大火で、長者町の泉本誠一の家も、僅かに蔵一棟を残して焼けた。やむをえず一家全員が、当分は土蔵の中で暮らすことになった。 ある日の夕刻、泉本誠一が外へ出て空を眺めると、不思議な大鳥が飛んでいた。雲を掠めて過ぎ去る鳥の丈は三メートルあまりもあったろうか。羽は金色に照り輝いて、仰ぎ見る人の眼を射た。 隣町でも見た者があったという。いかなる鳥か知れない。 思うに、南方の火の鳥か朱の鳥か、いずれにせよ火の妖怪であろう。 |
あやしい古典文学 No.1160 |
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