『南路志』巻三十六より

たてがえし

 宝暦のころ、土佐国安芸郡馬路村に怪獣が出た。

 顔は猫のようで、全身灰色の毛に覆われていた。円筒形の体で、胴回りは一メートル半以上あるように見え、体長は二〜二メートル半くらい。手足がなく、ふつうは腹で這って行く。
 高いところから下りるときや、行く手に岩などあって行き詰まったときには、立ち上がってから前方へ身を倒して進む。それで、土地の者は「たてがえし」と呼んだ。
あやしい古典文学 No.1164