古賀侗庵『今斉諧』巻之三「水虎与人交 一・二」より

河童と交わる

    (一)

 豊後の岡には、河童がたくさんいて、よく人間の女と交接する。
 実際に目で、交わっているのが見えるわけではない。、眠る女が、夢の中で射精されたように感じる。それがすなわち、河童に犯されたときなのだ。
 河童と交わった女は、嫁に行くことができない。嫁入り先に必ず河童がついてきて暴れまわり、鬱憤を晴らそうとするからだ。
 女は夫なくして孕み、周囲の者はどこぞの男と姦淫したものと怪しむが、十月経って出産するのは、蝦蟆(ひきがえる)みたいな形のもの数十匹。これこそ河童の子である。
 もし、産後三年のうちに河童がまた交接しに来なかったら、もう大丈夫。嫁に行っても邪魔されないそうだ。

    (二)

 ある商家の息子が、河童と親しく付き合うようになった。
 河童が家に来ても、周囲の者には姿が見えない。しかし息子は座敷の一隅を向き、両手を床に突いて交接の形をなし、ほどなく射精する。河童と交わっているのである。
 河童が来ること久しく、交接の回数はいよいよ重なって、一日に五六度にも及んだ。
 家人はやめるよう厳しく叱ったが、息子は聞かず、ついに精髄が枯渇して死んだ。
あやしい古典文学 No.1167