古賀侗庵『今斉諧』巻之二「狼四」より

狼の満月

 狼は人や獣を襲って喰らう。
 満月以前には必ずその頭を喰い残し、満月以後は必ずその足を喰い残す。

 香坂維直の知るところの山寺の僧は、夜半に山中を行って狼に出遭い、喰われたが、頭だけ残っていた。
 その日を問うに、まさに満月以前だった。
あやしい古典文学 No.1213