岡村良通『寓意草』下巻より

穴さぐり

 山川の石の狭間には、鰻という魚がいる。狭間に手を差し入れて鰻を引き出すのを、「穴さぐり」という。
 関口というところの岸は石積みで、秋の雨が降って水かさが増えると、鰻が多く集まる。そこで人々は、腰まで川水に入って穴さぐりをする。

 ある侍が、刀と衣を岸において、半裸で探っていると、手ごたえがあった。
 ふんどしの端でしっかり括り、ずいっと引っぱると、鰻ではなく、五尺あまりの蛇だった。
 蛇が大の苦手という人だったので、キャア!と悲鳴をあげて飛び退った。衣も刀も放置したまま逃げ惑ったが、ふんどしに括りつけたから、逃げるままに付いてくる。
 赤裸で両手を広げて叫び、ふんどしからはみ出た陰茎を打ち振りながら、わが家まで逃げ入って気絶した。
 これを見て、笑わぬ者はなかった。
あやしい古典文学 No.1217