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古賀侗庵『今斉諧』巻之五「猫(補遺)」より |
屋根で踊る猫 |
長府の侍 田沢多左衛門の家では、並外れて大きな赤斑猫を飼っていた。 この猫は、姿を変えて怪をなすとの噂があったが、多左衛門は笑って意に介さなかった。 ある日、多左衛門が戸外へ出て、何気なく見上げると、猫が屋根の上に立って踊っていた。 これにはさすがに驚き、そっと屋内に戻って刃物を懐に忍ばせた。 夕刻、餌を器に盛って猫に食わせながら、左手で首を掴み、右手で刺し殺そうとした。その瞬間、 「アッ!」 腕が痺れて、刃物を取り落とした。 猫は逃げ去った。 多左衛門の右手は、それっきり使い物にならなくなった。 |
あやしい古典文学 No.1238 |
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