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『浪華奇談』「小児水に化す」より |
小児水に化す |
大阪の東横堀川にかかる今橋の西詰、山中氏の男子は、寛政年間に三歳で病没した。 亡骸は壺に納めて埋葬したが、七年ほど後に改葬するとき、蓋を開いてみると、壺の中には清水と毛髪があるのみで、ほかに何もなかった。 昔からの言い伝えで、「七歳未満の児は骨肉ともに水に化す」というのは、空言ではなかった。 かつて河内の生駒山の麓で、百姓が岨道を掘っていたところ、小さな甕が出てきた。甕の中には清水が溜まってあった。 ちょうどその折、村では一人の婦人が難産で苦しんでいた。百姓がその産婦に、甕の水を一掬い飲ませると、たちどころに出産した。 それより「安産の薬水なり」と言い広め、あちこちからの求めに応じて与えるに、すべて効き目があったという。 筆者が思うに、その水も、亡児が化したものであろう。 |
あやしい古典文学 No.1242 |
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