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横井希純『阿州奇事雑話』巻之一「鹿糞薬湯」より |
糞風呂 |
阿波国海部郡の鞆浦と宍喰浦の間に、手倉山・下手山がある。 ともに海へ突出した山で、田畑のある内陸の山へ続く道が石垣で遮断されているためか、ここに棲む鹿は昔から、それぞれの山に自生する黄檗(キハダ)の皮ばかりを食して、他のものを食べない。 黄檗の内皮から「百草」という良薬を作ることは、昔から知られている。 それで、誰が思いついたか、薬風呂に用いるべく、手倉山・下手山の鹿の糞を拾い集めた。ちなみに、ここの鹿の糞は、兎の糞のようにはなはだ堅いのであった。 糞二升ばかりを袋に入れ、水風呂で焚き出して入湯すると、癪気、疝気の類の諸病が治癒する。 今では、この鹿糞を商うようになったという。 本当に効き目があるのだろうか。 牡牛に七日のあいだ蓬を食わせ、七日目の糞を粉にして、疱瘡の薬にするというが、その類のことか。 医書に書かれていることか。また、ほかの土地でも行われていることなのだろうか。 |
あやしい古典文学 No.1246 |
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