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菅茶山『筆のすさび』巻之一「地中声を発す」より |
地中声 |
文政二年三月、備後国深津郡引野村の百姓 仲介宅の榎の根下の地中から、声が聞こえた。人の呻き声のようだった。 仲介の家では息づかい程度に微かに聞こえるだけなのに、数百メートル離れたところでは、ひどく大きな声だった。 一晩じゅう聞こえたのは三月十五日の前後二十日ばかりのあいだで、昼は静かだった。まれには聞こえない夜もあった。しだいに間遠になり、ぼんやりしてきて、ついには聞こえなくなった。 それから二年ほど経つが、何の変事もないそうだ。 |
あやしい古典文学 No.1249 |
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