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古賀侗庵『今斉諧』巻之二「物化龍」より |
龍になりたかった… |
岡本勘次という佐賀の侍が、自宅の庭に池を掘った。水は近くの川から引き込んだ。 ある日、風が吹き荒れ、豪雨が降って、雷鳴がしきりに轟いた。 にわかに池水あふれて庭一面に満ち、猛烈に波立った。その勢いになすすべなく、ただ眺めていると、池の中に何ものかがあって、盛んに動き、跳躍しようとしているようだ。頭部は見えるが、全身は分からない。 たまたま主の勘次が不在のときで、家人は、そのものの眼光の射るような鋭さに怯えて、急ぎ近隣に告げ知らせた。 駆けつけた大勢の人が、刀や槍や棍棒で滅多打ちにしたので、そのものはあっけなく死んだ。とともに、たちまち雷雨は去って、天空はおだやかに晴れわたった。 人々は庭に横たわる死骸を見た。身の丈は一尺五寸ばかり、頭は猫に似て、肉角が二本生え、眼は死してなお恐ろしい光を発していた。 これは龍に化そうとして、未然に殺されたものにちがいなかった。 |
あやしい古典文学 No.1261 |
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