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『本朝語園』巻十之下「宗輔権蜂」より |
蜂飼大臣 |
京極太政大臣と称された藤原宗輔公は、無数の蜂を飼っていた。 蜂の一匹一匹に「なんとか丸、かんとか丸、……」と名前をつけ、公がその名を呼ぶと、蜂が思い通りに集まった。 召使の内に罰すべき者があるとき、 「なんとか丸よ、あいつを刺してこい」 と命じると、蜂はそのとおりに実行した。 出仕のとき、牛車の両側の物見窓のあたりを飛び回っている蜂どもに、 「とまれっ」 と号令をかけると、いっせいに車にとまった。 こんな公のことを、世間では「蜂飼大臣」と呼んだ。 あるとき鳥羽院で、突然蜂の巣が落ちて、蜂があたりに飛び散ったことがあった。 人々が刺されまいと逃げ騒ぐなか、公は御前にある枇杷(びわ)を一房取り、琴の爪で皮を剥いて高く差し上げた。 すると、飛び回っていた蜂が全て枇杷に取りついたので、供人を呼んでそれを持ち去らせた。 院は感心して、 「さすがだ。宗輔がいてくれてよかった」 とお褒めになった。 |
あやしい古典文学 No.1267 |
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