『語園』上「柏陽仙ヲ飲事 列仙傳」より

柏陽の仙薬

 中国後漢の魏柏陽は、三人の弟子と犬とを連れて山に入り、そこで仙人になる薬を煎じた。
「まず、犬に与えて試してみよう。犬が薬を飲んで空を飛んだら、われらも飲むことにしよう」
 柏陽が犬に薬を飲ませると、ただちにコロリと死んだ。
「あれ? おかしいなあ」
と言いつつ柏陽も飲んで、同様に頓死した。
 続いて弟子の一人が飲んだが、やっぱり死んでしまった。
「こ、これは……」
 残った二人は驚いて顔を見合わせ、こっそり山を下りていった。

 やがて柏陽はむっくり起き上がり、死んだ弟子と犬に、先の薬をもう一度飲ませた。
 弟子も犬も、たちまち元通りに生き返った。
 その後、柏陽は、逃げ去った二人に手紙を遣った。それを読んだ二人の恥ずかしさ、悔しさはいかばかりだったろう。
 柏陽と弟子と犬は、いっしょに仙人になった。
あやしい古典文学 No.1259