『渡邊幸庵対話』より

村じゅう轆轤首

 吉野山の奥に、轆轤首(ろくろくび)村というところがある。そこの人々は、一人残らず轆轤首だそうだ。

 村人は皆、幼少の頃より常に首巻をしている。
 市の立つ日、繁華な里へ物を買いに出てきた中年男をうまく言いくるめて、首巻を外させて見たところ、首のまわりに筋があった。
 その筋を指で押すと、ふわふわとして窪み、口が開くような感じだった。
あやしい古典文学 No.1294