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『本朝故事因縁集』巻之五「石見国竜水巻」より |
魚群巻水 |
石見国の海上にて、波静かなひとときに、ふと漣(さざなみ)が起こって数千の魚が集まり、乱れ泳いで騒いだ。 竜となるべき魚がその中心にいて、頭を空に向け、じっと動かなかった。 周囲を群魚が渦をなして廻るとき、海水は高く巻き上がり、かの魚は天に翔け上った。黒煙のごとき巻水の中に、たしかに上昇していく魚を見ることができた。 これこそ、魚が竜となって昇天するさまであった。 |
あやしい古典文学 No.1329 |
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