高力種信『金明録』第五冊より

馬の幽霊

 このごろ、御器所村で馬が死に、その幽霊が出て、村人が恐れている。
 幽霊は夜に池の水面に現れ、人が近寄ると消え失せるという。

 じつは馬の幽霊ではなく、そのあたりにアシカが来て棲むのだろうとも言われる。昼は池の底に潜んでいて、夜になると出てくるが、人の姿を見ると沈んでしまうのだ、と。
 しかし、荒海に生息するアシカが、どうしてこんなところに来たのかという点で、納得がいかない。
あやしい古典文学 No.1337