朝日重章『鸚鵡籠中記』元禄六年六月より

夢のままに

 近ごろ、江戸でのことだ。

 さる屋敷の御納戸で、中間が三人寝ていたが、夜半、夢を見たのか、一人の男がふと起き上がり、脇差を抜いて、別の一人の首を斬り落とし、また伏して熟睡した。
 しばらくして、もう一人が、血生臭さに気づいて目を覚ました。火をともして見たら、血だまりの中に首が転がっていた。
 仰天し、熟睡している男を揺り起こして、
「おまえがやったのか。なんでまた、こんなことをしでかしたのか」
と責め問うた。
 目覚めた男も、惨状を見て呆然とした。
「夢で、おぬしらがわしに斬りかかってきたので抜き合わせたが、その後どうなったかは覚えていない。さては、夢のままに斬り殺してしまったのか」

 斬った男は牢に入った。
あやしい古典文学 No.1365