下津寿泉『怪妖故事談』巻之四「通身水晶ノ如キ事」より

水晶の骸

 中国で、帳南軒という者が、晩年に及んで、体液が流出して止まない奇病に罹った。
 治療法がなく、結局、発病の翌年に死んだ。

 棺に納めた死骸は、皮膚と肉が透明になっていた。臓腑も骨格もいちいち数え上げることができた。その透き通って輝くさまは、水晶のようだった。
 この不思議な病は、古来よりの医書にも載っていない。
あやしい古典文学 No.1367