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神谷養勇軒『新著聞集』第十七「洛陽小左衛門狂人」より |
名刀 |
京都の長刀鉾町に、小左衛門という絹織物商人がいた。 小左衛門は商売のかたわら刀の目利きをして、ある時、正宗の名刀を一振り手に入れた。 その刀を、刀剣鑑定の権威である本阿弥に見せたところ、「これは偽物」と言って突っ返してきた。 小左衛門は激怒し、 「情けないことを言うものだ。それならば、名刀の証拠を見せてくれるわ」 とわめいて、門柱の石に斬りつけ、刀をさんざんに折ってしまった。 その後、本阿弥から「もう一度見せてくれ」と言ってきたが、すでに刀はないばかりか、小左衛門は狂気を発して家を飛び出していた。 狂人は幾年も、京都の往来で袖を広げ、あらぬ事を口走った末、その命を終わった。 |
あやしい古典文学 No.1369 |
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