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| 広瀬旭荘『九桂草堂随筆』巻八より |
鼠がいっぱい |
| かつて備中を旅したとき、天領倉敷の支配地である真鍋島というところで、海中から鼠が夥しく上陸して作物を害したため、政庁より人を派遣して鼠退治をすることになったとの話を聞いた。 今年、その種の鼠が東国ならびに雲州・石州に大いに出て、ずいぶんな被害が生じているらしい。 巷では、鼠害の絵入り瓦版などを売り、六十万匹ほど殺戮した地もあると言っている。すべて海から湧き出た鼠なのだそうだ。 その昔、備中の某氏の倉に鼠がいっぱい出て、毎日四五百匹も捕らえたが、猫は一匹ずつ殺しては食うので数を稼げず、犬の方がかえって役に立ったという。 また大阪では、死んだ鼠を船二艘に積んで売りに来たことがあったそうだ。それを百匹あたり五文くらいで買った者がいる。鼠の牙を彫物に用い、髭は筆の穂にすれば、大利を得ることができるとか…。 聞いた当時、こんな話はすべて虚言だと思ったが、あにはからんや、実説だった。今年の鼠大発生が、それを証明している。 なお、海から生ずる鼠には、みな水掻きがあるとのことだ。 |
| あやしい古典文学 No.1389 |
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