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広瀬旭荘『九桂草堂随筆』巻八より |
うるう月の彫刻家 |
豊後日田の月出山の西南に、藪村というところがある。 そこの洞穴の中に、大きな仏像が彫られているが、いまだ完成していない。 言い伝えによれば、閏月(うるうづき)の朔日(ついたち)ごとに人が来て、彫っているのだという。しかし、それを見た者はいない。 彫りはじめは元禄ごろらしい。筆者が三十年前に見たときには、頭から腰まで出来上がっていた。今年、たまたま藪村の人に会ったので尋ねたら、腰の下もだいぶ形を成してきたそうだ。去年の閏七月に新たに彫った箇所が、見ると分かるという。 これは何者が彫るのか。村人は、天狗だろうかと言っているが…。 |
あやしい古典文学 No.1395 |
座敷浪人の壺蔵 | あやしい古典の壺 |