朝日重章『鸚鵡籠中記』元禄十三年五月より

怪鯉

 大曽根の町を出て山田へ行く道の、板橋の川筋で、ある町人が大鯉を網で獲った。
 体長は三尺に近く、四足があり、鋭い牙歯を剥き出していた。驚きのあまり、町人がとっさに棒で叩き殺そうとしたほど、異様な姿だった。

 その後、これを大公が取り寄せて、じきじきにご覧になった。そのおり、腹中より蛙三匹、蛇三匹を吐き出したという。
 ほどなく魚は死んだ。
あやしい古典文学 No.1400