木崎、窓『拾椎雑話』巻二十三より

いさぎよい猫たち

 浄安寺という寺で、小僧が、飼い猫が物陰で踊るのを見て、和尚に告げた。
 それで和尚も気をつけていたところ、ほんとに踊っていた。
 和尚は猫に、きっぱり言い渡した。
「おまえがこっそり踊っているのが分かった。そんな不埒な猫を、寺におくことはできない。どこへなりと去れ」
 猫はさっさと出て行った。

      *

 仲六右衛門という人の家で、飼い猫が子を育てていた。
 それを見やりながら、六右衛門の女房が、
「親猫は年寄りだから、これからは子猫のほうを飼って、親はどこぞへやってしまおうかしらね」
と、何気なく口にした。
 その日のうちに、親猫は姿を消した。
あやしい古典文学 No.1424