『岩邑怪談録』「普済寺猫踊の事」より

明日も踊ろう

 普済寺という禅寺の猫が、ある日の夕飯後、赤手拭を口にくわえて、こっそり出かけた。
 不思議に思った小僧が跡をつけると、琥珀という所の草原に、猫が多数集まって、踊りをおどっていた。

 ひとしきり踊って、踊り疲れた猫たちは、おのおの帰りかけながら、
「また明日の晩、集まろう」
「おお、そうしよう」
「ここに集まって、みんなで踊ろう」
 そう口々に、人のごとくものを言って別れていった。
あやしい古典文学 No.1424