『本朝故事因縁集』巻之五「先山甲吐石玉」より

穿山甲

 天文年間の初め、周防国の氷上山興隆寺で、「大蛇を見た」と僧侶が大騒ぎした。
 人々が集まって探し出し、捕らえたのは、穿山甲(センザンコウ)だった。日本にいないはずの生き物である。

 穿山甲は蛇の一類だが、毒は持たない。また、妖しい生き物でもない。
 寺の周辺で飼っておいたら、あるとき石玉を吐いた。それは奇石として、北辰祭に供えられた。
あやしい古典文学 No.1425