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『諸家随筆集(村井随筆)』より |
東武七奇 |
寛政十年、「東武七奇」とされる巷説。 (一)飛鳥山の桜が返り咲きした。谷中感応寺の桜は、もはや六月というのに花盛り。 (二)本所で、八十歳の女が男女の双子を産んだ。また、麻布一本松の水茶屋の婆は、かめという名で九十二歳だが、六月一日に男子を産み、その子は生まれ落ちるや物を言った。 (三)五月一日、鯨が品川沖に現れた。体長十六メートルあまり。 (四)王子の狐が年頃の女に化け、日本橋の魚屋金太郎と心中した。祇園祭の夜、赤坂でのこと。 (五)芝三田の魚籃観音の先代住職が、牛になった。 (六)五月の末、品川沖に琉球人の船が来て、鎌倉河岸で捕捉された。琉球人の布団は、丈二メートル半もあった。 (七)奥州から、六百歳の女が出た。寿永三年生まれ。 |
あやしい古典文学 No.1436 |
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