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津村淙庵『譚海』巻之五より |
陰獣仲間 |
江戸深川の小名木沢に近い川べりに、先祖代々そこに住まう人の家があった。周囲は田畑が多く、人気の少ないところであった。 ある夕方、主人が庭を眺めていると、縁の下から小さい狐が一匹、這って出てうずくまった。 それを飼い猫が見つけて、最初は怪しむ様子だったが、やがておずおずと近寄り、狐の臭いを嗅いで、ほっと安心したような顔になって寄り添った。 以来、猫は時々、狐と一緒に歩き回ったりして、友達になった。しまいには、どこへ行ったのか、行方知れずになったという。 「猫も狐も、元来が同じ陰獣だから、すぐに気が合って怪しまず、こうした成り行きになったのだろう」 と、その主人は語った。 猫は「狸奴」とも呼ばれ、狐狸に使われるものだ。狐狸に誘引されれば、共に化けて踊りあるく。 狐狸の集うところには、必ずといっていいほど猫が交っている。 ある人が、越ケ谷の知人の家に行って、三日ほど泊まったところ、毎夜、座敷の方に、人が立ち居するがごとく密かに手を打って踊る気配があった。 気味が悪くて眠られず、亭主にそのことを語ると、亭主は首をひねりながら、座敷の様子を覗きに行った。 すると、慌てて格子窓から飛んで出たものがあった。そいつが逃げ去ったのに続いて、また一つ飛び出したものを、ハタキで打ち叩いた。 あやまたず打ち落としたのを火をともして見れば、家で久しく飼っている猫だった。客人の皮足袋を頭にかぶって死んでいた。 「こんなふうに、狐などが踊り騒ぐときは、猫も交っているのだよ」 と、客人だった人は語った。 |
あやしい古典文学 No.1445 |
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