渡邊政香『今昔参河奇談』「箕打沢の鯢魚」より

山椒魚を呑むのだ

 加茂郡箕打沢村の金蔵というところに、家が六軒ある。そこから山へ入ること一里あまりで、谷水の流れがある。
 その谷水に、山椒魚の一種「アンコウ」が棲息している。大きなものは四五寸、小さいので一二寸くらいだ。
 腹中に病をもつ人は、土用の時分に谷水まで行く。そしてアンコウを捕って生きながら盃に入れ、あるいは手ですくってそのまま、水とともに呑むのだ。
 五六匹、さらには十匹、それで足らないと思えばニ十匹も飲めば、病が癒えるという。

 近年、三河の国内はもとより、他国からも呑みに来る者が多いらしい。
あやしい古典文学 No.1455