藤岡屋由蔵『藤岡屋日記』第八十一より

若返り

 上州新田郡太田由良村に、牛馬の仲買を生業とする大五郎という者がいる。父親はすでに他界し、母親は存生である。

 大五郎の母親は、すでに歯が抜け、頭も白髪の老婆だった。
 ところが、文久三年三月の中頃、にわかに歯が生え出し、髪は真っ黒になり、皮膚の皺ものびて、十七歳くらいの娘のようになった。
 親類たちが寄り合って嫁入りの相談をしたが、本人がきっぱり断り、独身を守っているとのこと。
 見物人が大勢押しかけているらしい。
あやしい古典文学 No.1458