森島中良『紅毛雑話』巻ノ二「弗尼思」より

フーニス

 「フーニス」は鳥の名だ。中国の明代の星の図では、「火鳥」と訳されている。
 この鳥は、寿命四五百歳にして、おのれの死を悟る。死の時に至れば、香木を積み上げてその上に立つ。炎天を待って尾を揺すり、火を起こして、自ら焚死する。
 その死灰が変じて一つの蟲となり、蟲は化してまた鳥となる。

 「フーニス」は、世界にただ一羽しかいない。死すると同時に、また一羽が生ずるのだ。ゆえに西洋には、友なきもののことを「フーニス」と呼ぶ諺がある。
 この鳥の絵図は、動物学者ヨンストンスの書にも載っている。しかし、じつは架空の鳥だとも言われる。
あやしい古典文学 No.1460