唐来参和『模文画今怪談』より

小人に射られる

 肥後の阿蘇神社の傍らに庵を結んで住む僧があった。何となく病み衰えて臥せりがちの日々を送っていた。

 あるとき、僧が炉に炭を足そうと、炭入れを引き寄せたところ、その中から、甲冑を着け弓矢をたばさんだ五寸ばかりの武者が立ち現れた。
 怪しく思って火箸で打とうとしたが、武者は飛びのいて、弓に矢をつがえて放った。
 矢は僧の左の眼に当たり、痛むことはなはだしい。
 「わぁ、なんだこれは…」とうろたえているうちに、小さい武者は二の矢を放ち、右の眼に命中した。
 両眼をあっけなく射られて、何も見えない。納得しかねて眼上を手で探ったが矢はなくて、しかしそれきり僧は盲目になった。

 中国の秦の理公の妻は、異人が来て剣で耳をそぐ幻覚の後、聾者となったという。その類の奇病であろうとのことだ。
あやしい古典文学 No.1477