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柳原紀光『閑窓自語』中「雪中見奇蝶語」より |
雪中の蝶 |
雪がたいそう降り積もった京都の朝、筆者は山科敬言卿と馬を並べて、賀茂神社へ向かった。 馬場の、あたりの広く見渡せる所にいたると、雪の中に、紅の三四寸くらいのものが落ちているのが目にとまった。 「残り紅葉が雪に散ったか」と言いながら馬を進めて近づいたところ、それは羽が五寸ばかりもあるらしい赤い蝶だった。 ただ赤い羽なのではなく、斑入りともいうべき繊細な色合いで、「珍しいものだなぁ」などと話すうちに、蝶は高く舞い上がって、神社の後ろの神山のほうへ飛んでいった。 冬の、とりわけ深雪の朝、雪上に伏す蝶とは、まことに聞きも及ばぬことだった。 |
あやしい古典文学 No.1519 |
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