『本朝故事因縁集』巻之四「雲州佐田宮牲」より

龍の子

 出雲国神門郡の佐田大明神は、杵築宮(きつきのみや)の末社にあたる。
 この神社へ、毎年十月の最初の卯の日に、龍宮城よりの供物として、龍の子がやってくる。
 龍の子は、海上を藻に乗って寄せて来て、神社の前の汀に打ち上がる。数万の人々が、跪いてこれを拝み見る。
 そのとき巫女が器を持って進み出て、身の丈一尺ばかりの龍の子を、その中に移す。

 いにしえより今に至るまで、変わらず続く神事である。
あやしい古典文学 No.1525