中村満重『続向燈吐話』巻之八「滝川家の狸の事」より

出たがり狸

 伝え聞くところでは、滝川播磨守の長門馬場の屋敷には、老狸が棲んでいるらしい。
 この狸は、来客があると、稚児小姓とか茶坊主に化け、給仕の者に交じって客の前にしゃしゃり出る。主人が叱りつけると退出する。
 屋敷内のどこに棲んでいるのか分からない。出たがりであるほかには、妨げになるようなことはしないそうだ。

 本当かどうか知らない。いや、実際どうなんだろう。
あやしい古典文学 No.1543