『本朝故事因縁集』巻之二「備後国奇形獣」より

奇獣の一喝

 天正元年の春、備後国の三原の奥山で、頭は人で首から下は熊という獣が発見された。

 その獣が木の枝上にいるのを、人々が群集して見物していると、やにわに山を震わす大声で、獣が叫んだ。
「我を見るより、おのれを見よ!」
 皆おどろいて、どっと逃げ去った。
あやしい古典文学 No.1548