森島中良『万国新話』巻之一「石人」より

石人

 「納多理亞(ナトリア)国に、宝玉を多く産する山がある。国民は坑夫として動員され、山で玉を掘る。
 ある日、坑夫たちが一つの石穴に入って中を見ると、数限りなく石人があった。
 それらの石人は、昔、戦乱を避けた民が穴居し、やがて死んで、長い年月のうちに凝結したものだろうとされる。

 筆者が先年目を通した蛮書の中には、大きな石窟の内に十字形になった死人が数百立っている図があった。
 その書の名は忘れてしまったが、あれはまさに石人の図だったのではないかと思う。
 そういえば、越後国にある弘智法印の即身仏なども、石人の一種といえるのではなかろうか。
あやしい古典文学 No.1580