森島中良『万国新話』巻之一「葬送に人を殺す話」より

葬送に人を殺す話

 韃靼の西北に「得自得(テペテ)」という、はなはだ強剛な国がある。

 得自得国では、国王が死ぬと棺を輿(こし)に載せて葬送し、途中で人に遇うと、
「汝、死んで王に仕えよ」
と唱えて殺害する。
 ある王の葬礼のとき、殺された人は万を数えたという。
あやしい古典文学 No.1583