朝日重章『鸚鵡籠中記』元禄五年十二月より

博打捕物

 先年の冬、古渡村で博奕の最中、捕り手の者が十二三人で来て、六十人あまりの賭博者を逮捕しようとした。
 滝が花の大博奕打ち、江戸源五という者は馬鹿力で、四五人が束になって取りつくのを右に左に蹴倒して、ゆうゆうと金をしまい、賽まで懐に入れて逃げ去った。
 惣七という者も大力だったが、三人ほどでかかり、これは不運もあって生け捕りにされた。

 六十人が心を合わせて立ち向かったら捕り手を粉砕できたであろうに、ああいう悪所に集まるのはたいがい腰抜けで、多くは慌てて逃げまどい、金銀を取り散らかしたまま遁走した。
 新六は平岩四郎兵衛の知行地の百姓で、山崎村の紺屋であるが、このとき井戸に落ちて、そのまま一日水に漬かっていたそうだ。
あやしい古典文学 No.1585