『本朝故事因縁集』巻之一「常陸坊海尊成仙人」より

常陸坊海尊

 常陸坊海尊は、源義経の都落ちに同行した家来の一人で、義経が奥州高館城で滅亡したとき、逃れ去って、富士山に身を隠した。
 当初は食物がなくて困ったが、あるとき、石上に飴のようなものがたくさん置かれてあるのを見つけ、それを取って食べた。以来、食べずとも飢えず、木の葉を衣として寒暑を知らず、死ぬことなく三百年が過ぎた。

 近年は信濃国の深山の岩窟で自適の暮らしをして、いまだに老いていないという。
あやしい古典文学 No.1599