古賀侗庵『今斉諧』巻之二「男子生子」より

懐妊男子

 文化四年、江戸品川の一男子が懐妊した。
 五か月後、出産におよび、父子ともに死んだ。

 中国の見聞録には、次のような記事がある。
「ある若い男の俳優の腹が、だんだん膨らんできた。中で何かが動くようになり、まるで子を孕んでいるかのようだった。ある日、演劇の上演中、ひどく腹痛し、一つの胞衣(えな)を下した。中に長さ三四寸の肉塊があり、人のような形をしていた。俳優の腹痛は嘘のように消えた」
 これを読むに、西方の国にも、同様の出来事があったらしい。
あやしい古典文学 No.1614