谷川琴生糸『怪談名香富貴玉』巻五「河内の国あやしき鳥の事」より

火ともし鳥

 河内の狭山あたりの百姓が山仕事に行って、鶯の大きいような鳥を捕まえ、家に帰って籠に入れておいた。
 それは不思議な鳥で、夜ごとに火をともした。闇の夜であっても、この鳥の火があれば、ほかの灯火はいらなくなった。

 夜ごと夜ごとに鳥が火をともすうち、近所の評判になり、見物人も多く来た。
 しかし、その火がどんどん大きくなっていくので、後には恐ろしくなり、どうしたものかと思っていると、あるとき、餌をやろうと籠を開けた隙に、いずこへか遠く飛び去ってしまった。
「奇妙な鳥だったな」
と人々は言い合ったが、何という鳥かを知る人はなかった。
あやしい古典文学 No.1617