野田成方『裏見寒話』巻之三より

水乞鳥

 首と尾が赤い綺麗な鳥だ。
 天から降る水を飲むべく、雨の日は空を仰いでいる。

 江戸の近郷にいる水乞鳥は、鵯(ひよどり)ほどの大きさがある。嘴は大きく、長く、太く、鮮やかな朱色だ。尾は短い。
 翡翠(かわせみ)を大きくしたような形なので、「深山翡翠」とも呼ばれる。雨天の時は、人家近くに来て鳴く。
 自分の嘴の赤さが水に映ると、恐れてほかの水辺に飛び移るが、そこでもまた赤さに恐れる。この繰り返しで、どうしても地上の水を飲むことが出来ないのだという。
あやしい古典文学 No.1618