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『今昔物語集』巻第二十七第一「三条東洞院鬼殿霊語」より |
鬼殿の怪 |
京都三条大路の北、東洞院大路の東の隅は、「鬼殿」と呼ばれてきた。そこは、悪霊が棲むとされる所だった。 まだこの地に遷都されていなかったころ、今の鬼殿の場所には、大きな松の木があった。 あるとき、近くの男が馬に乗り、矢入れを負うて松の下を行き過ぎようとすると、にわかに稲妻が走り、雷鳴が轟いて、雨が激しく降ってきた。男は進むことができず、馬から下りた。 松の木の根元で馬の手綱を控えたまましゃがんでいると、そこに雷が落ちて、男も馬も蹴り割られたようにばらばらになって死んだ。そして男は、そのまま悪霊になった。 その後、遷都が行われると、鬼殿にも家が建って人が住んだが、悪霊は去らず、いまだにそこにいるとのことだ。ずいぶん長く居ついている悪霊なのである。 実際そこではたびたび不吉なことがあったと、人は今に語り伝えている。 |
あやしい古典文学 No.1635 |
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