岡村良通『寓意草』下巻より

毛と煙

 宝永の末、富士山が噴火してのち、江戸の土に毛が生えた。空からも毛が降った。
 生えた毛は黒くて短く、降った毛は白くて長かった。

 享保のころ、土からも木からも、黒煙の立ち上ったことがあった。
 春時分の出来事で、南の風の吹く日だった。
あやしい古典文学 No.1659