岡村良通『寓意草』上巻より

心はさまざま

 世に同じ顔の人がいないように、人の心はそれぞれさまざまである。

 村井新左衛門という人がいた。たいそうへりくだる人だった。
 その人の家に神がいるという話を聞いて、使いの者をやって尋ねさせたところ、
「ごく小さい神様がおります」
と返事があったとか。
 また、謙道入道という法師がいた。思ったままに何でも大言する人だった。
 便所のつくりのことを語るに、
「旅に出て、貧しい家の便所に入るのはつらい。我は血気が強いゆえ、大便が普通の人より勢いよく出る。便所の床が低いと、糞壺の中身が跳ね返って、汚くて困る」
と言った。

 かたや神さえ小さいと謙遜し、かたや糞の出るのさえ勢いがあると誇るのだった。
あやしい古典文学 No.1681